「7つのムダ」とは?製造現場のコスト改善の要素

「7つのムダ」とは?製造現場のコスト改善の要素「かざふてつどう」

「7つのムダ」とは?製造現場のコスト改善要素「かざふてつどう」

「ムダを省く」というのは、企業の運営においてとても重要なことです。コストの削減につながるのはもちろん、仕事内容の見直しにもつながり、より効率的な業務内容にすることができます。

製造現場でもそれは同じであり、作業の効率化によって、近年問題となっている人材不足への対策にもなるでしょう。

自動車で有名なトヨタ自動車株式会社では、そんなムダを省くため、独自の生産方式を掲げています。

トヨタが大企業となった裏側には、どのような生産方式があるのか。「かざふてつどう」について紹介します。

トヨタの生産方式とは?

トヨタの生産方式とは、トヨタ自動車株式会社が制定した、ムダを省くための思想のことです。

「異常が発生したら、直ちに作業を停止して不良品を作らない(自働化)」ことと、「必要なものは必要な時に必要な量だけ造る(ジャスト・イン・タイム)」ことの2つを基準とした生産方式であり、トヨタグループ始祖である豊田佐吉氏と、トヨタグループの創業者である豊田喜一郎氏の考案によって制定されました。

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「自動化」ではなく「自働化」と表現する理由は、人の働きによるものだからです。「異常が発生したら各セクションの担当に報告してラインを止め、原因を追究して問題解決をする」といった流れを徹底・自動化することで、リスクを減らし、商品の品質を向上させることができます。

作業を見直し、とことん作業が簡略化されれば、作業者の負担と生産コストの削減にもなります。最終的には、誰がやっても同じ作業ができるようにすることで、一定の品質を保てるようになるわけです。

また、ジャスト・イン・タイムを守ることで、生産によって生じるムダを省くことができます。生産コストや管理コストの低下はもちろん、少数生産にすることで品質のばらつきを減らし、不良品となるのを防げるようになるでしょう。

ジャスト・イン・タイムを実施するには、製造工程に合わせて指示書も一緒に渡すことで対応します。「かんばん方式」と呼ばれる方式であり、作業内容だけではなく、部品の数や納品時間なども記載することで、ムダがなく効率的に生産できるようになるのです。

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自働化とジャスト・イン・タイムは、どちらも時間的なムダを省き、コストの削減につながるものです。作業員はリスクが少なく楽ができ、お客様にはより早く商品が提供できるなど、企業側以外にもメリットがあります。

生産現場の「ムダ・ムラ・ムリ」を徹底的になくすことこそが、トヨタが掲げる生産方式の目標と言えるでしょう。

7つのムダとは?

7つのムダとは、トヨタの生産方式から見る7つの改善項目のことです。自働化とジャスト・イン・タイムから見つかる問題点を、分かりやすく、7つに分類して精査します。

「加工」「在庫」「不良・手直し」「手待ち」「造りすぎ」「動作」「運搬」からなる7つの項目であり、製造業界で起こりがちな問題とも言えるでしょう。

それぞれの頭文字から「かざふてつどう」とも呼ばれており、それぞれの項目を見直すことで、生産現場の「ムダ・ムラ・ムリ」の解決へとつながります。

  • か:加工のムダ
  • ざ:在庫のムダ
  • ふ:不良・手直しのムダ
  • て:手待ちのムダ
  • つ:造りすぎのムダ
  • ど:動作のムダ
  • う:運搬のムダ

製造現場に潜む7つのムダ

では実際に、7つの項目をそれぞれ確認してみましょう。

中には、製造業以外でも当てはまるムダもありますので、自分の仕事に当てはめて考えてみてください。

不要な加工作業や工程を実施することで生じる「加工のムダ」

加工のムダとは、不要な作業や工程をすることによるムダのことです。必要のない作業は時間のムダですし、その作業中は他のことができません。場合によっては、電気代や仕掛品のムダにもつながります。

算数で言えば、足し算を掛け算で計算するようなものです。「1を100回足す」よりも「1を100で掛けた」方が、時間の節約になりますし、作業的にも楽ができます。

空いた時間を別の作業にあてることで、より生産効率も上がるでしょう。

大切なことは、従来のやり方に捕らわれないことです。「伝統だから」「いままで上手くいっていたから」といって思考停止せず、今一度見直してみる必要があります。

過剰在庫によって生じる「在庫のムダ」

在庫のムダとは、在庫過多によって生じるムダのことです。原材料、部品、仕掛品、機材、さらには完成品も含め、物が多すぎることで倉庫(保管所)を圧迫し、管理費用や新しいものが置けない問題が生じます。

休まず製造を続けるためにも在庫管理は大切ですが、あまり多すぎては意味がありません。使われない在庫はごみと同じです。

また、使う予定があっても、モデルチェンジや製造変更によって不要になる場合もあります。もちろん、不要になること自体は仕方がないですが、在庫の量によって、ムダになる量も異なるでしょう。

余計なムダを抱えないためにも、在庫の量を明確にし、それぞれの目的や使い方をしっかり把握する必要があります。

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不良品の発生・選別・廃棄などによって生じる「不良・手直しのムダ」

不良のムダとは、不良品によって生じるムダのことです。不良品ができると捨てるしかなく、その分の原材料が無駄になります。他にも、作業時間、機械の電気代、作業に当たった人件費など、原材料以外に様々な無駄が生じてしまうでしょう。

また、再発を防止するため、場合によっては見直しや手直しも必要です。問題点の洗い出しから改善案の提案、その内容の伝達や教育など、本来なら不要な作業が発生してしまいます。

不良品を少しでも減らすためにも、作業工程の見直しによって人的ミスを減らし、品質管理によって、問題を早期発見することが大切になります。

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作業者がやるべき仕事がなく遊んでいる状態で生じる「手待ちのムダ」

手待ちのムダとは、手待ち状態によるムダのことです。何もさせないのは人件費の無駄になります。手待ちの時間を別の作業に使えていたと思えば、人材のムダ使いともいえるでしょう。

もちろん、手待ち状態になるのは、作業員がサボっているからではありません。作業工程の配分が悪いため、作業ができなくなってしまうからです。いくら作業をしたくても、前の作業が遅れていれば、後ろの工程は待機せざるおえないということです。

手待ち状態を減らすためにも、全体の流れを把握し、人員の分配や手順の見直しが重要になります。

また、必要なら試しで流してみるのも良いでしょう。実際に行ってみれば、時間配分もよく分かります。「論より証拠」を心がけてみてください。

製品を余分に造りすぎてしまうことで生じる「造りすぎのムダ」

造りすぎのムダとは、不要なものを余分に作ってしまうことによるムダのことです。「いつか使うから」といっていくら作ったとしても、それが使われなければ大量に在庫が余ってしまいます。在庫のムダと同じく、余った在庫は邪魔にしかなりません。

また「造りすぎのムダ」は7つのムダの中でも「最悪のムダ」とも言われており、造りすぎてしまうことで、「在庫のムダ」、「動作のムダ」、「運搬のムダ」を引き起こしてしまう可能性があります。

さらには、造りすぎている間は作業をする人たちが見かけ上では忙しく動き続けてしまう(ムダになってしまうものを造ってしまっている)ため、見方によっては「手待ちのムダ」を起こしてしまっていると言えなくもありません。

造りすぎの無駄を発生させないように、生産管理をきちんと実行していくことが大切です。

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造りすぎのムダとは?7つのムダの内 最悪のムダと呼ばれる理由

製造の進捗に関係しない不要な動作によって生じる「動作のムダ」

動作のムダとは、不要な動作が増えることによるムダのことです。立ったり移動したりなど、必要以上に動くことで、作業時間のムダにつながります

たとえば、Aの作業とBの作業をするとします。Aの作業をした後にBの作業をする必要がありますが、Aの作業机とBの作業机は離れており、続けて作業するには移動を挟みます。ですが、Aの作業机の隣にBの作業机を用意すれば、移動する必要がありません。その結果、移動する手間が省け、その分、作業に集中することができるでしょう。

また、不要な作業は作業者に余計な負担やリスクを与えます。万全の状態で仕事をしてもらうためにも、余計な負担を与えるべきではありません。

作業に無駄が生じないよう、作業の流れや手順を見直し、作業環境の改善をすることが大切です。

必要以上にモノを移動させることで生じる「運搬のムダ」

運搬のムダとは、物を移動させる際に生じるムダのことです。動作のムダと似ており、こちらは、物を置く、物を積み積み上げる、持って移動する、整理をするなどが該当します。

また、資材の導入や商品の出荷など、運搬に関することにも該当します。通販と同じであり、別々に頼むことでその分の費用が発生するのはもちろん、到着までの時間もかかってしまうのです。商品の到着が遅れれば、それだけ作業が遅れ、手待ちのムダも発生します。

対策方法は、動作のムダと概ね同じです。作業の流れや配置を見直し、導線を作ることで動作の無駄を減らせます。始めから配置場所を決めておけば、整理する手間も省けるでしょう。

事務系職場における7つのムダ

製造現場における「7つのムダ」を紹介してきましたが、トヨタ社内には「事技系職場における7つのムダ」というものもパネルにして貼りだしているようです。

社内の業務を効率化させることに役立ちそうだと話題になりました。

事技系職場における7つのムダ
事技系職場における7つのムダ
①会議のムダ 「決まらない会議」「決めない人も出る会議」を開催していませんか?
②根回しのムダ 自分の“安心”のために、“全員”に事前周りをしていませんか?
③資料のムダ 報告のためだけに資料を作っていませんか? A4/A3 一枚以上の資料を準備していませんか?
④調整のムダ 実務で調整していても進まない案件を、「頑張って」調整しようとしていませんか?
そういった案件は、すぐに上位に相談しましょう。
⑤上司のプライドのムダ 自分に報告がなかったという理由だけで、「私は聞いていない」と言っていませんか?
上司がこう言うと、②根回し③資料のムダが発生します。情報は上司自ら取りに行きましょう。
⑥マンネリのムダ 「今までやっているから」という理由だけで、続けている業務はありませんか?
⑦「ごっこ」のムダ 事前に練ったシナリオどおりの“シャンシャン会議”をしていませんか?
決めようとせず、その周辺ばかりをつつくことで議論した気になっていませんか?

事技系職場における7つのムダ – トヨタ自動車株式会社

事務職やIT企業などの技術職の職場においてのムダを確認するものとして、7つのムダとそのムダが発生していないかどうかを自問自答して確認できる質問文が書かれたパネルを社内に貼ってあるそうです。

製造現場、事務職場での代表的な7つのムダとして挙げられていますが、どんな職場においても「ムダ」というものはあり得ます。例えば製造現場のムダの内の1つに「不良・手直しのムダ」がありますが、製造現場においては不良品が出来てしまったり、手直しが必要になったりすることによるムダですが、事務職場に置き換えれば、誤字脱字がある状態で印刷してしまい、修正して印刷しなおしたりすることもムダと言えます。さしずめ「印刷のムダ」と言えるかもしれません。

まとめ:7つのムダを確認して現場の無駄を軽減

製造現場に限ったことではありませんが、ムダをなくすことはとても重要なことです。コストの削減はもちろん、作業の効率化にもつながります。

トヨタの生産方式は、そんなムダを省くための方式です。7つのムダに当てはめて考えることで、ムダとなっている部分が明確になるでしょう。

「出費が激しい」「人手が足らない」「生産効率が上がらない」などと悩んでいる人(企業)は、ぜひトヨタの生産方式を参考にし、「かざふてつどう」を意識してみてください。

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